先生と呼ばれて(山本理)

戸田ゼミコラムのアーカイブです。このコラムはすでに連載を終了されています。

2013年10月

教育に熱心なおうちの生徒のなかには
私のところへ来る前から
英検の資格を持っている子供がチラホラいます。

ネイテイブの先生に
教えてもらっていたと云うパターンが
多いのですが、
そこで感じることがあります。
確かにリスニングと発音はよく出来るのですが、
問題集を解くとなると
少し話は変わってくるのです。
それと云うのも
英語を書くことだけに焦点を当てると
リスニングのレベルにまで
到達していないようなのです。

英検の試験は
筆記とリスニングの問題がありますが、
筆記はそれほどでもなかったけれど、
リスニングの得点がほぼ満点で、
合格した生徒もいます。

今まで、書く練習をしていないのだから
当然といえば当然なのですが
その生徒たちは大抵
呑み込みが早くて、
中学生にもなっていないのに、
この調子でいくと、
大学生の頃には
英語で苦労することは
ないだろうなと云う子もいます。

となると、教える側も
ある程度英語が出来なくてはいけないから、
勉強中の私は焦るばかりです。

少子高齢化から考えると、
塾はもう斜陽産業です。
大学の授業はネットで見ることが
出来るようになっているし、
予備校でも通信制のところがあります。
だから、普通に塾をしているところは
今すぐにでもなくなってしまうのかと云うと
そんなこともないと思います。

ネットで勉強が出来るのは
もともと一人で
勉強が出来るような生徒だけだと思います。
塾の生徒で
進研ゼミをしている子供もいますが、
実際に問題を解いている生徒は
ごくごく一部で、そう云う私も
教材が届いたら漫画の部分だけ読んで、
あとはほったらかしでした。

それから考えると、
大部分の人は
勉強するときに伴走してくれる先生が必要で、
その先生も生身の先生のほうが
いいということになると思います。
小学生や中学生のワンパク盛りの子供を
画面の向かうから注意しても
迫力がないものですね。

だから塾も形を変えながら、
生き残る産業の一つだとみています。
でもそう強がりを云ってみても、
その数は減るだろうし、
よほど上手に舵取りしないと
沈没してしまいます。
やはり少子高齢化と国際化に
照準を合わせて
私自身が変わっていけるか、それが問題です。

褒めないと人は動かないと
昔の偉い海軍大将は云ったそうですが、
同じ山本でも私の考えは違います。

いつもいつも褒めていると
生徒やその親は
私が優しい先生で何を云っても怒らない。
つまり、与しやすい人間だと
思っているのだと気づきました。

私が口を酸っぱくしてもしなくても、
生徒の出来には関係ないとは思っているのですが、
あまり軽く見られるのも嫌だし、
その意味では、
人は少しこわもてのほうがいいのかもしれません。

そう考えて、先日少し態度の悪い生徒を
叱ってみました。
ところが、どうしたことでしょう。
私の言葉が終わるか終らないうちに
その中学生の男の子が泣いてしまって
注意した私がホトホト困りました。
普段、怒らないと思っている人間に
キツク注意されると
それはそれでこたえるんですね。

考えてみれば、
私の塾は、
しょっちゅうテストをして、
クラスの振り分けがなされているような
大手の塾ではありません。
たくさん塾があるなかで、
個人でやっているところに
生徒が来ると云うことを考えると、
うちの塾にはそういった意味の
厳しさは求めていないのかもしれません。

一般的には大手の塾は
勉強の得意な子が集まって
ガリガリ勉強するところ、
個人の塾は
一人ひとりの勉強を
よく見てくれると云った風に
思われているのでしょうね。
実際にすべての塾を
体験した人はいないのだから、
本当のところはわかりません。
ママ友や子供たちの友人関係などの
口コミで、ひとつの評判が出来上がるのでしょう。
そうすると、塾はイメ-ジ産業の
一つなのかもしれません。



勉強をして点数が伸びる子がいれば、
なかなか結果が出ない生徒もいます。

誰が勉強が出来て、勉強出来ないのかは、
授業をすれば、わかります。
本当は勉強しなくてはいけない成績の生徒が
アクビを連発したり
姿勢がだらしなくなったり、お喋りを始めるのです。
そして、そのほとんどがその日限りではなく、
いつも同じ生徒です。
あんまりにも態度が悪くて
見るに見かねる子の場合、
私は叱ると云うよりも怒ります。

私の場合、生徒の人数はしれているし、
もし、本当にお手上げならば
その生徒をやめさせることも出来ますが、
(したことはありませんが)
学校の先生はそうはいきません。

成績や家庭環境、授業態度の違う生徒が
1クラス40人集まっているのだから、
学校の先生は
大変だろうなと同情したくなります。

私が学生のときを思い返すと、
無気力な先生もなかにはいましたが、
無気力な生徒に接しているうちに
やる気をなくしてしまったのかもしれません。

大学を出て理想に燃えた新米の先生で
理想と現実のギャップで苦しんでいる人が
結構いると思いますが、
そんな生徒に対する方法は
言ってわからない生徒に対する
1つの方法は怒ることだと思います。

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